夏季休暇。朝、妻と娘が支度をして軽井沢へでかけていった。

どうしようかしら、なんとなく携帯電話を手に取る。インターネットを見ていると、どういうわけか青ヶ島の情報がババッと入ってきた。青ヶ島は八丈島の更に南にある人口167人ほどの島である。

青ヶ島行って散歩だけして帰ってくるの最高に楽しそうだな、と少し思った。一方で船の就航率が5割程度なこともあり上陸困難な島とか、行ったら帰って来ることができないとかネガティブな情報もたくさんでてくる。しかもお金もそれなりにかかる。

昼食をとる。どうも青ヶ島の情報が入ってきて気になる。しかしながら、いつもとは違う場所で散歩したいだけなのに、そんな行けるかどうかもわからないような場所にお金をかけて行っても良いものかという葛藤があった。

そこで私は「いつも利用している西武池袋線をひたすら逆に行ったらどうなるのか」という弱めの企画で自分の気持ちを落ち着かせようとした。

行き先は稲荷山公園駅に決めた。いつもと逆向きの電車に乗る。保谷の方まではたまに来ることがあるけど、それより西にはあまり行ったことがない。どんどん電車で西へ向かう。

そして稲荷山公園駅についた。すぐ着いた。稲荷山公園をうろうろ歩く。めちゃくちゃでかい公園だ。ほとんど人もいないし、若干曇っていたせいか、少し涼しいし散歩するのには最高の日だったと思う。
ほぉーこれが稲荷山公園かー。30分ほど歩いてリフレッシュしたあとこう思った。

よし、やっぱり青ヶ島いこう。船が出なくて行けなかったら、それはそれで思い出になるだろう。この時点で夕方18時頃。

急いで家に帰る。最低限の用意をして、船が出る場所に近い大門駅へ向かう。20時すぎ頃、竹芝客船ターミナルに到着。ここから22時30分発の橘丸に乗船することで八丈島へ行くことができることを確認。八丈島到着は翌朝8時55分になる予定。チケットを買ってターミナルで待つ。

念の為青ヶ島行きの船に乗り継ぎできるか、そもそも明日船がでるのか確認したところ、翌朝確認してみてくださいということで、東海汽船株式会社の八丈島営業所の電話番号を教えてもらった。

朝7時から営業しており、八丈島が見えてきたら電話がつながると思うので船の中から電話してみてくださいとのことであった。いいね。その感じ。よし、そうしてみよう。

2時間ほど待って橘丸に乗船した。黄色くて大きな船だった。乗船しながら、ただ散歩したいだけで船乗ってどこまでいくんだこれは。というような気もしたが、知らない場所に行ってテクテク歩く。それが今一番楽しそうで、やりたいことなんだから仕方がない。

船が動き出した。

大学生と思われるグループが数十名楽しそうにしていた。先生に誘導されて船の中の部屋に移動する小学生ぐらいの子どもたち。子どもたちもキャッキャッとお話をしていて楽しそう。家族連れ。外国人カップル。

私は妻に今晩の船で八丈島へ行き、八丈島経由で青ヶ島というところへ向かう予定だということを連絡した。

東京湾の中を橘丸が進む。両方からビル群のまばゆい光。
2022年夏、私の散歩大作戦が始まった。